松村組は1894年の創業以来、それぞれの時代で社会に求められるニーズに応えながら、
さまざまな施工に取り組んできました。このページでは、松村組の技術を結集して
再整備に挑んだ京都市美術館の事例をご紹介します。
京都市美術館・再整備プロジェクト
1933年に京都屈指の文化ゾーン(京都市左京区岡崎)に開設されて以来、この街のシンボルとしてあり続けた「京都市美術館」。築80年以上が経過し、耐震性・防災・安全性が問題となっていました。そこで2017年、予算100憶円を超える再整備プロジェクトが開始されました。「京都市美術館」は、その建物自体が文化財となることが前提であったため、外観・内観ともに当時の風情やしつらえを可能な限り残しながら、バリアフリー機能・耐震性・安全性を付加することが求められました。そんな高難度の「京都市美術館・再整備プロジェクト」の施工を松村組が一手に担い、竣工後の2020年8月、近代建築としての意匠を保存・継承しつつ、現代的な機構を加えたことを高く評価され、国有形登録文化財(建造物)への登録を果たすことができました。
設計のこだわり~設計部長のコメント~
古き良き風情を残しながら、使う人の未来まで見越して機能を付加
耐震補強をするのであれば、一からつくり直す方が機能面では間違いないのですが、古き良きしつらえをきちんと後世に受け継いでいくことも大切です。
古いしつらえをどのように残し、どの機能を刷新するか。避難計画もしっかり考慮した安全な建物をつくるための工夫を、細かいところまで考え抜きました。
私たちの仕事は「建物をつくること」ですが、つくって終わりではありません。後のメンテナンスなどで負担がかからないように、細かいところまで考え抜くことも同じくらい重視しなければならないのです。
京都市美術館の内観
難問だらけだった耐震補強工事。重さ1トンの鉄骨を小窓から搬入
本館を耐震工事する際、できるだけ原型を残すという条件があったため、今回の工事では屋根が塞がったままでの作業となりました。重さ1トンの鉄骨をどこから搬入するのか、さまざまな検討を行った結果、最終的に採用した案は軒下の小窓から搬入するというもの。小窓までの搬入はクレーンが使えましたが、小窓から屋根裏への移動・作業は人の力によるものとなりました。いかに大変な工事になろうとも、意匠と機能、どちらも最善のモノになるよう工夫を凝らす。まさに松村組の底力が試された案件でした。
施工のポイント
- 小窓から鉄骨などのパーツを入れた屋根裏部分。2階の床から屋根裏まで足場をくみ上げ、作業床を設置しました。軒下から作業床までは1mほどしかなく、非常に難しい作業となりました。
- 本館旧エントランスの庇はそのままのカタチで残すため、地震の揺れを建物に伝えない「すべり支承」を採用。梁と柱の間に弾性のあるすべり材を取り付けることで、地震の力を逃がす技術です。
- 大窓があることで耐震性が保てなかったため、窓枠内に鉄骨を通しました。
- 1階の大窓については鉄骨の補強だけでは強度が足りなかったため、大きな鉄版をはめ込むことで、耐震補強の強化を行いました。
未来の街づくりのために
このページでは「京都市美術館・再整備プロジェクト」をご紹介しましたが、私たちの挑戦、そして技術は、この1つのプロジェクトでは語りきれません。
松村組はこれまでの130年の歴史のなかで、未来に向けた街づくりを、
全国各地、さまざまな用途の建物で行ってきました。
しかしどんな用途の建物であっても、
使う人を心から想う姿勢は変わることがありません。
この姿勢は、松村組のすべての社員にDNAとして根付いています。
そしてこれからも、基本に忠実に、誠実な一歩一歩の積み重ね、
未来の街づくりに挑んでいきます。